またお邪魔してました
皆さんこんにちは。tailです。
またまた行ってきました、無人古本屋さん!
今回は本を2冊と、ポストカードを何枚か購入しました。
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こちらの「時間を我等に」は、タイトルに惹かれて手に取りました。表紙を見てなんとなく小説かと思ったんですが、漫画の文庫版でした。
以下に詳しくご紹介します。(基本情報から下はネタバレを多分に含みます!読むまで知りたくない、という方はまとめへどうぞ)
「時間を我等に」基本情報
SFチックな短編がたくさん入った漫画の文庫版で、作者は漫画家の坂田靖子さん。タイトルでは敬称を略していますm(_ _)m 私は今回初めて知った漫画家さんなんですが、1975年に白泉社「花とゆめ」コミックスでデビューされたそうです。
完全に余談なんですが、Wikipediaを見てびっくり!誕生日が同じでした…!すごい偶然。なんか嬉しいです。
初版発行は1995年4月、私が生まれる前でした!トイレットペーパーがティッシュのように一枚ずつ取るタイプだったり、日常的に外にお風呂に入りに行っているのかなというような描写があったり、時代の違いがわかるという点でも楽しめました。
起承転結がはっきりしていて、いわゆる「オチ」が分かりやすい話が好きな方には向かない作品も多かったかなという印象ですが(うちの母はそういうタイプです)、切なかったりクスッと笑えたり、バラエティに富んだ雰囲気の作品が入っていて楽しかったです。
全ての作品は紹介出来ないですが、特に気になったお話をピックアップして紹介していきたいと思います。
秋探し
こちらは1番最初に入っていたお話です。
一軒家の縁側で、1人の青年が桶に貯めた水の中に何かを投げ込んでいる描写からお話は始まります。
そこに1人の老人が訪ねてきて「何をしているのですか?」と尋ねると、「トーフを水に投げ込んでいる」との返事。「うまくいけば泳ぐはず」と…
ここまでで既に独特な世界観に引き込まれました。桶の中で泳ぐ豆腐、きっとかわいい。
老人がトチの木という人を探していると言うと、青年はうちの二階に住んでいると答えます。結局その日は出払っていて会えませんでしたが、そこから老人が昔のトチの木のことを思い返す回想シーンに入っていきます。
トチの木はとにかく好奇心旺盛な性格で、突飛な行動をしたり、不思議なものごとを信じたりしているような人で、主人公はいつも振り回されていました。
時間は現在に戻り、老人はにこやかに「あいつ昔のままかな」などと考えながら窓の外を見ています。
場面は変わって、恐らく最初の青年の「あ トチの木さん お客さんですよ」という台詞でお話は終わります。
当時は大変だったことも、歳を取ると楽しい思い出になったり、昔気が合わなかった人の考えが何年か経って分かることもあると思います。本の題名のように、勝手に進むけど元には戻らない時間というものの切なさ、また面白さを描いている作品だと感じました。
羅生門
これまた好奇心旺盛な平安時代の貴族らしい人に、仕えている男が振り回されるという構図のお話が2本入っています。
1本目では、来年のことを話すと鬼が笑うというけど、来年のことを話している最中に年が明けるとどうなるのか?ということを検証しに羅生門に行くんですが、普通にしてる時の鬼の恐ろしい表情と、来年の話を聞いて笑っている時の表情との対比がなんとも見事で、とてもかわいかったです。
2本目では、鬼に本当に豆が効くのかを検証しに、また羅生門へ行きます。色々あっておどろおどろしく出てきたはいいけど引っ込みのつかなくなっている、人間味に溢れた鬼にクスリと笑えました。
絵でみるひとびとのくらし
その当時の建物、道路、身近な食べ物などのことを、ずっと未来の人向けに解説している図鑑といったような、ユニークな構成の作品でした。未来はどうなっているんだろう…と想像が膨らみます。もっともっと何年も時間が経てば、本当に解説図鑑として読まれるかもしれませんね。楽しみです。
シリンダーの森
老人が森の中の家からシリンダーをもらってくるのですが、なんだか調子が悪そうで…
つい最近Twitterで少し話題になっていた「蛙化現象」を彷彿とさせるような、ちょっと切ない作品だと感じました。(ご存じない方は是非調べてみてください)
水道完備
水道をテーマにした、今までよりさらに短い作品が8本入っています。どれも面白かったんですが、特に「蛇口の家」が好きです。わずか2コマの作品なんですが、私は漫画というより絵画のように楽しんでしまいました。文字でうまく表現できないのがもどかしいですが、とにかくどこを見てもかわいいのがすごいです。
まとめ
全体を通して、ストーリーや発想の面白さもさることながら、シンプルな線で構成された、可愛かったり怖かったり繊細だったりと、様々な味わいのある絵にも圧倒されてしまいました。
私も絵を描く人間の端くれとして、絵の良さというのは自分の感じたことや見たもの、気持ちなどを一目でたくさんの人に伝えられるという点にある、というふうに最近は感じていたんですが(某イラストレーターさんの受け売りでもあります)、その逆というか、言葉にできない微妙な感情や色々に解釈できる雰囲気などを伝えられるのも絵の魅力だな、と、この漫画を読んで思いました。
ここまで長々と書いておいて何ですが、むしろ言葉を尽くすのも野暮かなというくらい…今では電子版もあるみたいですね。この記事を読んで気になった方は、是非読んでみてください。そして、感想などお気軽にコメントくださると嬉しいです。
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